SHIFTのAI活用事例
対話型AIメンター「mentai」で従業員の本音を引き出す
人的資本経営を推進するSHIFTでは、従来から定期的な従業員満足度調査(ES調査)を実施してきましたが、これに加え、AIメンターが対話形式で深く話を聞く「mentai」を開発・導入※。これまで見えなかった従業員の本音や言語化できない気持ちまで把握できるようになり、より的確なケアや従業員のパフォーマンス向上につなげられるようになりました。
定量的なES調査は組織の状態を数値化するのに有効ですが、一方で定型的な設問では表面的な回答しか得られないことが課題でした。また、回答時に従業員がその場でフィードバックを得られず、調査結果の分析と対策実施までに時間差が生じることも。全従業員と深い1on1面談を実施するという方法もありますが、7,000人(2025年5月末時点)を超える従業員を抱えるSHIFTでは現実的に難しい状況がありました。
AIメンターとの自然な会話から本音・悩み要因を可視化
これらの課題を解決するため、めんたいこをモチーフにした「めん太」が親しみやすく話しかける対話型AIメンター「mentai」を開発。約5,000人の従業員に展開しました。
「元気にしとる?最近はどんな感じや?」といった自然な問いかけに対して、従業員は気軽に口語で応答するだけ。わずか10分ほどの対話で、その場で会話の要約とネクストアクションの提案が表示されます。従業員は対話を通じて自分の思考を整理し、リアルタイムでアドバイスを受けることができます。

人事部では、AIの分析機能を活用して回答を処理。定量調査では「やりがいがある」と回答していた従業員でも「mentai」との会話では具体的な悩みが明らかになるなど、より正確な状態把握が可能になりました。
特筆すべきは、これまで不可能だった「悩みの要因」の詳細な可視化です。プロフェッショナルな面談技術を学習したAIメンターが、従業員の心情に寄り添いながらアドバイスを交えて質の高いヒアリングを行うことで、上司には話しにくい本音まで引き出すことに成功しています。これにより人事部や管理職は、従業員一人ひとりに対して的確な対応策を講じられるようになりました。

リアルタイムで価値を提供する新しい調査体験
「mentai」が革新的なのは、対話の最中から従業員の思考整理をサポートし、即時的なメンタルケアを提供できる点。従業員からは「AIとの対話を通じて頭が整理された」「自分でも気づいていなかった感情に気づけた」という声が多く寄せられています。なかには会話の過程で悩みが解決したという報告もあり、調査への協力と同時に自己理解が深まるという価値を提供することができています。
ユーザー体験(UX)への徹底的なこだわり
従業員の本音を引き出すには、高いユーザー体験が不可欠です。SHIFTでは特に以下の点にこだわって開発を進めました。
- AIメンターの魅力的なキャラクター設計
- 違和感のないナチュラルな会話
- 適切な所要時間の設定
特に「めん太」のキャラクターづくりには試行錯誤を重ね、信頼感があり親しみやすい存在として緻密に設計。人事部内にPdM(プロダクトマネージャー)とエンジニアを擁するSHIFTならではの、業務理解に基づいた細部までのこだわりが実現できました。

人的資本経営の高度化と効率化
「mentai」の導入により、SHIFTの人的資本経営は大きく前進しています。
高度化
- 全従業員との質の高い1on1対話が可能になり、それ自体が従業員エンゲージメント向上に寄与(約80%の従業員が「AIとの対話が有用」と評価)
- 個人名で退職リスクの予測が可能になり、介入すべき対象者や、介入タイミング、退職を防ぐための打ち手が明確化
- 調査で低スコアが出た従業員と退職率の相関性の精度が、ES調査に比べ3倍に向上
効率化
- AIとの1on1実施率は全従業員の約95%
- 人事部と管理職の面談・分析工数が大幅に削減され、真に必要な解決策検討に時間を割けるように
今後はより高度なパーソナライズアドバイスやキャリア相談の実現を目指し、他ツールとの連携や社内情報の蓄積を進めていきます。これにより人事担当者や管理職は、より戦略的な業務やイノベーションに時間を割けるようになるでしょう。
※試験導入、有用性調査を完了し、2025年7月より第1期導入開始。実用新案特許出願中。
「mentai」プロダクト担当
コーポレート人事部 ピープルアナリティクスラボ 所長 mentai PdM
福山 晋太郎