SHIFTのAI活用事例|AI活用深掘りレポート
システムを入れたのに、仕事は減らなかった。(前編)──AIに任せるべきは、「作業」ではなく「○○」だった。
経費精算システムや請求書管理サービスなど、経理業務を効率化するためのSaaSは数多く存在します。しかし、「システムを導入したのに業務負荷が思ったほど減らない」と感じている企業も少なくありません。実際に以前のSHIFTの経理部門でも、経費精算システム、経理業務を効率化するためのサービスは数多く存在していました。それでも、月末月初になると多くの処理が集中し、数十名を超える体制でも経理担当者がさまざまな対応に追われる状況が続いていました。
「なぜ、ツールを導入しているのにこれだけの人手が必要なのか。」
そこで私たちは、経理担当者が日々行っている業務を細かく分析しました。
そしてわかったのは、“人が行っていた仕事の正体は入力作業ではなく、確認と判断だった“という事実です。
この記事では、SHIFT社内において毎月7,000~8,000件規模の経費精算業務を見直すなかで見えてきた「システムを導入しても仕事が減らない理由」をご紹介します。
目次
1.便利なシステムは、すでにあった。それでも、なくならなかった「確認・突合作業」
2.人がやっていたのは入力ではなく「判断」だった
3.大きな投資は難しい。それでも、業務改革は待ってくれない
1.便利なシステムは、すでにあった。それでも、なくならなかった「確認・突合作業」
世の中の多くの企業と同じように、SHIFTでもクラウド経費精算システムや、請求書受領サービスといった便利なSaaSを以前から導入しています。システム上ではペーパーレス化も進み、申請や承認、データ集計もデジタル化されています。
それでも経理部門では、月末月初に多くの処理が集中し、複数の担当者が確認業務に追われる状況が続いていました。
「これだけ便利なシステムが入っているのに、なぜこれほどの量の確認作業が残っているのか。」
その理由を探ってみると、経理の現場では毎月全社1万人超の社員から上がってくる、月7,000〜8,000件という申請に対して、SaaS画面の裏側で経理担当者が泥臭く手動で行っている確認作業の存在が見えてきました。
出張旅費の申請が上がってきた場合、経理担当者は経費精算システムの画面だけを見て処理をするわけではありません。まずは別の稟議システムを開いて、事前申請の内容と金額が合っているかを確認します。そして、さらに別の勤怠システムを開いて、出張日と勤怠記録が一致しているかを確認します。
こうしたシステム間の「確認と突き合わせ」を、毎月何千件も人の目でやっているのが現状でした。つまり、経費精算システムによって申請自体はデジタル化されていても、実際の経理業務は、一つのシステムだけでは完結していないのです。 個別のツールやシステムごとに見れば、業務はデジタル化されているように見えます。しかし、業務全体で見ると、システムとシステムの間に残る作業を、経理担当者が人の手でつないでいました。システムを導入しても経理の仕事が減らなかった理由は、この「システムの間」にありました。

2.人がやっていたのは入力ではなく「判断」だった
ここで私たちは、一つのことに気づきました。
経理担当者が行っていたのは、データの入力や承認作業ではなかったということです。
本当に時間がかかっていたのは、申請内容や稟議、勤怠情報など、複数の情報を見比べながら、会社のルールに合っているかを確認し、判断する作業でした。
たとえば経費精算では、次のような確認・判断を手作業で行っています。
- 申請された日程と勤怠記録が一致しているか
- 出張稟議の内容と申請内容に差異がないか
- 交通機関の利用区間が規定の条件を超えていないか
- 領収書の金額や日付が、申請内容と一致しているか
一つひとつの確認は、経理業務としては日常的なものです。
つまり、人が担っていたのは単純な入力作業ではなく、システム間にある情報をつなぎ、会社固有のルールに照らして判断する仕事だったのです。
ここに、AIを活用する大きなヒントがありました。
これまでこうした確認業務を自動化しようとすると、システムごとに細かい条件やルールをプログラミングをしなければならず、開発にも保守にも大きなコストがかかっていました。
一方AIであれば、複数のシステムから必要な情報を集め、あらかじめ与えられたルールや判断基準に沿って、申請内容に問題がないかを一次判定できる可能性があります。 SHIFTは、この「人が行っていた確認と判断」を、AIに任せられないかと考えました。
3.大きな投資は難しい。それでも、業務改革は待ってくれない
複数のシステムと連携し、一連の確認業務までを自動化することは、技術的には不可能ではありません。しかし、それぞれのシステムに対して連携機能を実装し、会社ごとのルールや例外を落とし込むには、相応の開発費用と時間がかかります。さらに、運用開始後も規定やシステムの仕様を調整するたびに、保守、改修に投資を続けなくてはいけなくなります。
基幹システムを含めた大規模刷新に取り組める企業であれば、それを解決策として検討することもあるでしょう。しかし、経理業務の効率化だけを理由に、大規模な投資を決定できる企業や組織は決して多くありません。
一つひとつの処理だけを見れば、システムを開発するよりも、人が確認したほうが現実的だった。その判断には、これまで一定の合理性がありました。一方で、人手不足のなか、取引量や利用するツール、確認すべき情報、社内ルールは増えていきます。人材を採用し、業務知識を引き継ぎ、人を増やして対応しつづけることも、難しくなっているなか、人ありきの業務フローからは抜け出せない。いわば負のループだったのです。
大規模なシステム刷新には踏み切れない。しかし、業務変革を先送りすることもできない。SHIFTの経費精算業務も、このジレンマを抱えていました。
SHIFTが選んだのは、経費精算システムをつくり直すことではありませんでした。既存のシステムを生かしながら、その間で経理担当者が担っていた「確認と判断」を切り出し、AIに一次判定させる方法です。
AIへ任せるためには、経理担当者が何を見て、どの条件で問題なしと判断しているのかを、一つずつ言葉にする必要がありました。
(この記事の要点)
・システム化後も確認と突合の人による作業は残っていた
・仕事の正体は入力ではなく確認と判断だった
・全面刷新はすべての企業に合理的とは限らない
・人による全件確認を続けることも難しい
・SHIFTは確認と判断をAIの一次判定へ移す方法を検討した
後編では、こうした判断基準をどのように整理し、人による全件確認をAIによる一次判定へ変えていったのかを紹介します。また、一定の効果が見えたあとに生まれた、「AIの判定をどこまで人が確認しなくてよいのか」という新たな課題についても取り上げます。
システムを入れたのに、仕事は減らなかった。(後編)──人の全件確認を、AIによる一次判定へ変える
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